不動明王は全仏教文化圏に広く信仰されている仏様の一つで、起源については不明な点が多いですが、インドの神々の中で、後に仏教に取り入れられて守護神となっており、インド神話のシバ神に関連があるとされています。

不動明王が一般に信仰されるようになったのは「大日経」によるもので、大日如来の降魔【悪魔を払います】の化身としてからです。
又、亡者にとっては、まず生前犯した罪悪を取り去り、清浄な魂となって、成仏への道を進む第一歩を踏み出す初七日の加持佛となっています。

明王の「明」とは知恵のことで、正しい知恵を持つと「明かり」が暗闇を照らすように、煩悩【ぼんのう】を打ち破ることが出来ます。
近代文化は電気の発見によって夜を征服しましたが、それ以前は、夜は魔性のモノが横行する恐怖の対象でした。

何者も焼き尽くさんばかりに火焔に包まれて立つ不動明王の雄志は、庶民の心を捉えたのでありましょう。

そのお姿は、憤怒像といって怒りの形相をされ、真っ黒な身体で、右手に鋭い剣を持たれ、左手には縄を持たれ、背後には真っ赤な火焔を背負っておられます。

その恐ろしいお姿とその怒りは、実は慈悲の表れであり、世間の悩みと災難を断ち、悪事を退散させるため、剣は悪を断ち切り、縄は煩悩を縛って悟りを開くこと、火焔は闇夜を照らして迷いを焼き尽くすことを表しており、本当の幸せを守るということであります。

我々凡人は、大抵、自分の思い通りに行かないときに怒りますが、お不動様は、人々がどうしても悪事を止めないとき、また、心の中の煩悩が押さえようもなく沸き上がってくるとき、思いやりの怒りでそれらを叱ってくれるのです。

それを家庭にたとえるならば、すべてを暖かく受け入れてくれる母親の愛情に対し、子供が誤った道に進み始めたとき、それを厳しく叱って正しい生活に戻してくれる父親の愛情なのです。

昨今、子供に対し威厳のない父親が増えつつある中、単に効験だけを信じて信仰するだけでなく、不動明王の慈悲を正しく理解することが大切なことでしょう。

 

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