「むかわれ」と呼ばれる一周忌を司る仏様が、勢至菩薩ですが、十三仏信仰の中で、あまり知られていません。
しかし仏教の中では大変重要な菩薩です。
阿弥陀仏三尊のひとつとして阿弥陀如来の脇侍尊として観世音菩薩と一対となって、極楽浄土へと亡者を導かれるのです。
観世音菩薩が人々を救済する慈悲を表されるのに対して、知恵を施されるのが勢至様となります。
勢至とは、「大いなる知恵の勢いでもって、人々の仏智仏性を聞き、悟りに至らしめる」ということです。
「観無量寿経」の中には
「知恵を持って遍く一切を照らし、三途を離れしめて、無上の力を得せしむ故、大勢至と名ずく」とあり、
この三途とは、火途・血途・刀途で、迷いと戦いの世界のことで、皆さんよくご存じの三途の川とは、三瀬川・葬頭川・渡り川とあって
亡者の罪の軽減によって渡る川があり、その苦しみから、知恵を持って救い、その亡者を仏道に引き入れ、正しい行いをさせる菩薩なのです。
「薬師如来本願功徳経」には、八大菩薩のおひとりとして、臨終した人を天空から来臨され、浄土の道を教授して導かれ、宝蓮華として化生させるとあります。

それが「来迎図」として表され、観音様・弥勒様などと共に来迎されています。
その中で合掌されているのが勢至様です。仏像のお姿は、蓮台に座して合掌されることが多かったようですが、鎌倉時代以降は、立像で合掌されるお姿に変わってきました。
「図像抄」における大勢至菩薩のお姿は頭の額に、仏塔を表された宝冠を戴かれ、右手の親指・人差し指を伸ばされ、他の指は軽く屈する印を結ばれ、左手には未敷蓮華茎を持たれています。
この未敷蓮華茎は「大日経疏」によれば、「衆生の心の中に大いなる慈悲の蓮華を発育され、清い善お心を譲り増長させる」と説かれています。
独立した尊格として人々の中で信仰が広がることが少なく、独立像で建立されることも少なかった仏様でありますが、仏教本来の持つ教えと姿勢を、正しく単刀直入に、わかりやすく導いてくださる仏様でありましょう。

 

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